特別な温泉旅行はいかがでしょうか。
文豪が愛した温泉宿で、あの名作に思いを馳せながら
ゆっくりとつかる湯は特別な時間です。
原稿を書くのに欠かせない静寂な環境を求めて
執筆していた文豪たち。
そんな文豪と宿には様々なエピソードがありそうです。
文豪たちが見ていた空間や景色を時を超えても
眺め楽しむのは贅沢な癒しだと思います。
今回は、文豪が愛した旅館をご紹介したいと思います。
文豪が愛した温泉旅館は全国に120件ほど
あるそうです。
そのなかでも、言わずと知れた夏目漱石の名作、
有名な『坊ちゃん』ですが
道後温泉と温泉地が舞台です。
道後温泉は漱石だけでなく、多くの文豪に愛されてきました。
俳人・正岡子規、与謝野晶子など、きりがありません。
あの名作はここで生まれた。
文豪たちが愛した温泉地には文人たちの足跡を感じられます。
なぜ文豪たちは温泉地を好むのでしょう。
原稿を書くのに欠かせない静かな環境を求めて
執筆の場として、小説の舞台として、温泉街の静寂感を選び、
さらには「湯治療養」のために温泉を好んだのではないかと
筆者は思いました。
今回は、日本を代表する文豪たちが愛した温泉地を
厳選してご紹介していきたいと思います。
太宰治、夏目漱石 作家が愛した温泉街 8選
文豪ゆかりの宿は全国に120軒ほどありますが、
最初にご紹介したい夏目漱石が羨望した伝統と
品格を大事に受け継いだ道後温泉に佇む「ふなや」は、
江戸時代から380年の歴史を刻む老舗の湯宿。
夏目漱石の「はじめての 鮒屋泊りを しぐれけり」と
句にしたためたことは有名ですね。
1・ふなや
https://www.booking.com/hotel/jp/funaya.ja.htmlhttps://www.booking.com
2・明治
太宰治が小説『美少女』の中で描いた、
温泉宿「明治」。
執筆のため幾度となく訪れ、
宿に逗留していた時『正義と微笑』、
『右大臣実朝』の2編を執筆したと言われています。
そして珍しい自家源泉の源泉かけ流しです。
3・安田屋
静岡県沼津市の数奇屋造りの建物は、
有形文化財の宿。
太宰治が『斜陽』を執筆した宿として知られ、
現在も当時の間取りのままで宿泊もできます。
4・修善寺 新井旅館
明治5年創業の老舗旅館は有形文化財の宿。
多くの文人や画家、歌舞伎役者も愛した宿です。
横山大観、岡本綺堂は『春の修善寺』を執筆。
芥川龍之介は長期滞在し『温泉だより』
『新曲修善寺』など多数執筆。
尾崎紅葉は館主と親交が深く梅林内に句碑が残されてあり、
名作『金色夜叉』も宿で執筆されたという。
その他に川端康成、正岡子規、島崎藤村なども
訪れています。
5・修善寺温泉 湯回廊 菊屋
創業360年の老舗旅館。
明治末期に夏目漱石が病気療養のため菊屋に逗留。
しかし病気が悪化し一時は生死を彷徨い
「修善寺の大患」は有名です。
その後漱石は回復し、心にも転機をもたらし以後の作品
『彼岸過迄』『こゝろ』『道草』に大きな影響を与えたのでは、
と言われています。
6・有馬温泉 陶泉・御所坊
有馬温泉で約800年の歴史を持つ有馬温泉で
創業1191年の歴史を持つ老舗温泉宿。
有馬温泉でも数少ない温泉かけ流しです。
古くから著名人に愛した宿でも有名ですが、
古くは、足利義満、豊臣秀吉、初代内閣総理大臣伊藤博文、
『細雪』で有名な谷崎純一郎、
与謝野晶子などの文豪も愛した宿です。
数多くの文人達の作品で宿の名前が挙げられています。
7・塔ノ沢温泉福住楼
1890年(明治23年)にこの塔之沢で創業。
貴重な京普請の数寄屋づくりの登録有形文化財に指定され
多くの文人墨客の常宿として好まれ、
それぞれがお気に入りの部屋を指定して逗留されました。
福澤諭吉、夏目漱石、島崎藤村、巖谷小波、
武島羽衣、大佛次郎、川合玉堂、平福百穂、
日下部鳴鶴、中村蘭台、そして坂東妻三郎など、
多くの文化人に愛されてきました。
部屋の特徴には上下にスライドする障子、
かの有名な「雪見障子」があります。
客室は全部で17あり、間取りや室内の造作はすべて異なり、
同じ客室はないそうです。
17の客室の名前を少し紹介すると「せせらぎ」
「せきれい」 「桜一」から 「松・竹・梅・桐」と続きます。
ちなみに 福沢諭吉、夏目漱石、島崎藤村は(松二)、
川端康成(桐三)、のお部屋がお好きだったようです。
8・塵表閣
創業百年を誇る塵表閣。
源泉は100%掛け流しで、非加熱・非加水です。
『放浪記』や『浮雲』で有名な林芙美子、
夏目漱石や、立原道造、与謝野晶子、志賀直哉など
多くの文人墨客が訪れています。
壺井栄もこの塵表閣2階の一室で同じく
反戦小説である名作『二十四の瞳』を
書き上げています。
歴史を感じる空間で文人たちがどのように
過ごしていたのか想像してみると
感慨深いものがあります。
自然の中でゆっくりと過ごすのはいかがでしょうか。
そぞろ歩いてみませんか?外湯めぐり
伊豆の山あいにある修善寺は、開湯から約1200年もの歴史ある温泉街。
古都・京都を思わせる情緒あふれる街並みを、
お散歩するのも楽しいです。
修善寺温泉は、大同2年(807年)に弘法大師が
桂川で病父を洗う少年に心打たれ、
独鈷杵(仏具)で川の岩を打ち霊泉を沸き出して
温泉療法を伝授したと伝わる、
伊豆最古の温泉と言われています。
鎌倉時代には源氏興亡の哀史を秘めた舞台になるほど歴史があり、
春には梅や桜、秋には紅葉が美しく、
四季折々の自然に溢れています。
また夏目漱石をはじめ多くの文人墨客に
愛されてきました。
かつて河原沿いに7つの外湯があり、
それぞれが浴客で賑わっていました。
しかし、昭和20年代には『独鈷(とっこ)の湯』だけとなり、
往時を偲ばせるのみとなってしまいました。
その後、修善寺を訪れる人びとに外湯めぐりを
楽しんでもらいたいという願いから、
平成12(2000)年、外湯高さ12mの仰空楼(望楼)を
併設する外湯『筥湯(はこゆ)』がオープンしました。
修善寺の街並みを一望できます。
『筥湯』とはその昔、鎌倉幕府二代将軍源頼家が
入浴していたという伝説の温泉です。
檜造りで今流行りの日帰り入浴施設とは異なり、
内風呂のみで、極めてシンプルですが、
溢れる温泉に檜の香りがいっぱい・・・。
晴れた日には、天窓から光のシャワーが
キラキラと降り注ぎます。
ゆったりのんびりと温泉情緒を楽しめます。
泉質はアルカリ性単純泉。
効能は、冷え性や疲労回復、筋肉痛や神経痛など。
お湯が柔らかく、いつまでもゆるゆると入っていたくなるほど。
修善寺の街並みには心癒され、温泉に癒され、
ゆったりと過ごせる街なのだと気付かされることでしょう。
また、名所旧跡が徒歩圏内にぎゅっと凝縮されているので、
1日歩いて楽しめるのが魅力。
修善寺の歴史に思いを馳せながら、
趣ある街並みをゆったりと楽しんでみませんか。